
物質の誘電損失や磁気特性などを利用し、その名の通り電波を吸収して反射・透過を低減させる部材を指します。
空間の壁面や天井などに張り付けることによって電波の無響状態を生み出し、電波暗室や電波暗箱を作ることができます。
新製品の開発や研究などにおいて、電波吸収体をメーカーから直接購入し、簡易的な試験環境を自作している事業者も多くあります。
たとえば、電波(電場と磁場からなる波)がやって来ると、素材の中の分子や小さな磁石のような部分(磁気モーメント)が振動します。
この振動がエネルギーを熱として散らすので、電波の反射や透過が減るのです。
具体的には「誘電損失」と「磁性損失」という二つの働きがあります。
誘電損失では、電場が分子を動かし、摩擦で熱を生みます。一方、磁性損失では、磁場が磁気モーメントを揺さぶり、やはり熱に変換します。
こうした仕組みにより、電波吸収体はステルス機能や電子機器の電磁干渉対策などに活用されます。
電波吸収体は、周波数帯や使用環境に応じて求められる性能が異なるため、
多様な種類が開発されています。
たとえば、電子機器内部のノイズ対策には薄型タイプ、レーダー波のステルスには広帯域かつ高い吸収性能が必要です。
さらに材料や構造技術の進歩によって、同じ原理でもより薄型・軽量な製品が生まれ続けており、用途や目的に合わせて最適なものを選ぶ必要があります。

画像引用元:E&Cエンジニアリング公式HP https://ece.co.jp/products/absorber/vhp.html
ピラミッド形状をした電波吸収体は、高さによって電波吸収できる周波数帯が異なるので、広帯域に対応しています。

画像引用元:アクセス公式HP http://access-d.co.jp/products/s.html
シート型の電波吸収体は、フラットな薄型。軽くて接着しやすく、扱いやすいことに特徴があります。

画像引用元:E&Cエンジニアリング公式HP https://ece.co.jp/products/absorber/wg.html
ウェッジ型は、くさび型の形状をしている電波吸収体です。平行に入射してくる電波の吸収に活用されています。

画像引用元:E&Cエンジニアリング公式HP https://ece.co.jp/products/absorber/fl.html
歩くことを想定し、上を歩けるようにした構造の電波吸収体です。歩行路としても活用できる強度があります。
画像引用元:東京応化工業公式HP https://www.tok.co.jp/products/newfield/mmwaveabsorber
液体型の電波吸収体は、物体の表面に塗布したり、中型成形や空洞に重鎮したりすることで電波を吸収します。
| 種類 | 形状・特徴 | 主な素材 | 主な用途・業界 | 対応周波数帯 | メンテナンス・寿命 |
|---|---|---|---|---|---|
| ピラミッド型 | 広範囲の入射角に対応し、高い吸収性能 | ウレタン、フェライト、セラミックなど | 電波暗室、通信、自動車、研究施設など | 30MHz~110GHz程度 | 25年以上使用可。表面劣化に注意 |
| シート型 | 薄型・柔軟。粘着・接着が容易 | ゴム、ポリエステル樹脂、不織布など | 電子機器、自動車のノイズ低減など | 数百MHz~300GHz | 30~40年程度。耐水・耐候性要確認 |
| ウェッジ型 | くさび形状で平行入射向け | 炭素系材料、フェライトなど | 電波暗室、無響室など | 素材・形状により異なる | 定期点検が必要 |
| 歩行路型 | 歩行に対応する強度・高い耐久性 | 強化ウレタン、ゴム、金属補強材など | 電波暗室内の通路や作業エリア | 素材・形状により異なる | 清掃・点検が定期的に必要 |
| 液体型 | 塗布・充填可能。複雑形状にも対応 | 導電性ポリマー、フェライト微粒子分散液など | 航空宇宙、軍事、医療機器など | 素材により異なる | 環境で変動。再塗布や補修が必要な場合あり |
電波吸収体の価格は使われる素材やカバーする周波数帯、求められる性能レベル、注文数量などによって大きく変わります。
一般的なシート状吸収体なら1枚あたり数百円程度から入手可能ですが、
幅広い周波数を吸収できる高性能モデルや、軍事・航空向けのステルス用途品は数万円から数十万円に上る場合もあります。
特に無響室など大規模施設で使われるピラミッド型やハイブリッド型吸収体は、多層構造や特殊加工により高額になりやすいです。
また、原材料費や認証取得のための試験費用、製造プロセスの複雑さもコスト増につながります。
大量購入では割引が適用されるケースも多く、用途や予算に合わせた選択をしましょう。
◆主用途:電波暗室の壁面
ウレタンは、伸縮性や柔軟性に優れており、様々な環境に設置できます。また、軽量で扱いやすいです。
◆主用途:高周波デバイスのシールド
シリコンは、導電性や絶縁性の調整がしやすいです。電波吸収体の性能向上に役立ちます。
◆主用途:電子機器のノイズフィルター
ゴムは、弾性と柔軟性から多様な用途で利用される材料です。耐久性にも優れており、長期間使用できます。
◆主用途:建築物のシールド
セメントは、厳しい環境下でも劣化しにくいです。導電性の高い材料を混ぜることで電波吸収材として利用できます。
◆主用途:アンテナの反射防止
フェライトは鉄酸化物を主成分とするセラミックス材料です。高い磁気損失を持つ素材であり、電磁波を吸収する能力に優れています。
電波吸収体は300GHz以下の電磁波の反射と透過を抑えられるので、電波干渉対策・電波暗室・電磁波シールド・レーダーシステム・医療機器などに活用されています。用途を知っておくと導入できるかどうかの判断目安にしなります。以下に、電波吸収体が活用されている分野について詳しく解説しました。
電波吸収体を利用する環境によって、水・油・ほこりなどで汚れるリスクがあります。もしも、汚れてしまったら、メンテナンスをしなければ劣化が早まる恐れがあるでしょう。ここでは、定期的な清掃方法・湿度や温度管理・損傷チェック方法などをまとめています。
技術向上により寿命は延びていますが、正しく管理していないと劣化を早める恐れがあります。寿命を迎えると、電波吸収性能を維持できなくなるので注意が必要です。以下に、寿命の目安・交換時期・メンテナンス方法・使用条件について解説しています。
電波吸収体は様々な素材で構成されており、素材によって価格差が生じるケースがあります。また、サイズ・性能・カスタマイズ・メーカーなどにより価格が変動するので注意しましょう。以下により詳しい電波吸収体の相場価格をまとめました。
カーボンナノチューブやグラフェン、カーボンブラックなどの素材を活用した電波吸収体が登場しています。カーボンの特性を活かして様々な分野での活用がすすめられています。なぜこれらの材料が活用されているのか、開発が進められている理由についてまとめました。
テラヘルツは超高速無線を実現する周波数帯として注目されていますが、活用の難しさが課題となっています。すでにテラヘルツ帯に対応する電波吸収体も登場していますが、まだまだ開発途中の分野だといえるでしょう。ここでは、電波吸収体を開発するにあたって必要な知識を紹介します。
引用元:マイクロウェーブファクトリー公式HP https://mwf.co.jp/
6G領域の通信端末の評価や、軍事産業でも使える難燃性製品など、新たな製品規格の研究開発に精通。
屋外や真空環境での使用など、特殊な用途での電波吸収体の試作や制作についても相談できます。
また、電波暗室の建設についてもノウハウも豊富です。
引用元:新日本電波吸収体公式HP https://mwa.co.jp/
電磁波環境トータルソリューションカンパニーとして、暗室用の電波吸収体のほか、磁性シート、電磁波ノイズ抑制シート、シールド材の取り扱いも豊富です。
磁性シートは、高い磁気シールド効果 (µ'=50)を維持しつつ、磁束の減衰を極力無くす構造を実現しています。
引用元:TDK公式HP https://www.tdk.com/ja/index.html
EMC試験に関する高い専門性とノウハウから、適切な製品選びや試験環境構築の相談ができます。
電波暗室業界のパイオニア的存在として豊富な施工実績を誇り、先進的な技術を取り入れたEMC試験所も開設。
2024/3/28時点「電波吸収体 メーカー」で調べた際、最終ページまでの検索結果上の公式HPで電波吸収体の取り扱いを確認できたメーカー13社13社を調査。そのうち、用途別
に複数シリーズの電波吸収体を製造・販売している企業6社から以下の条件により3社を選定。
・マイクロウェーブファクトリー:6G帯にも対応できる電波吸収体の自社製造を行っている
・新日本電波吸収体:電磁波ノイズ抑制製品について最も多くのラインナップがある
・TDK:国際基準を満たしたEMC試験所を開設し、車載機器のEMC測定の試験所認定を取得している