電波吸収体は、300GHz以下の電磁波(電波)の反射や透過を抑える物を指します。
300GHz以下の電磁波というと、ラジオ・テレビ・携帯電話・家電・無線LAN・気象レーダー・自動安全走行システムなどの電磁波が該当します。活用できる範囲は広く、以下に代表的な用途を解説します。
| 用途・分野 | 主な目的 / 効果 | 周波数帯・ ノイズ源の目安 |
重要な要求特性 | 推奨吸収体・材料(例) |
|---|---|---|---|---|
| 電子機器 EMI対策 (スマホ・PCなど) |
ICやフレキ基板から出る高周波ノイズを抑え、他回路や外部への放射を防止 | 数百 MHz ~ 数十 GHz クラスの近傍磁界 | 薄型・柔軟、能動部品に直貼りできる電気的非導電性 | 磁性ポリマーシート(ノイズ抑制シート) |
| 電波暗室 (暗箱) |
30 MHz~40 GHz超までのEMC試験で内部反射ゼロに近づける | 広帯域(VHF~Ka帯以上) | 低反射、不燃・耐熱(高電力照射時)、床は歩行強度 | ハイブリッド吸収システム(フェライト+PUピラミッド)/歩行路用硬質ブロック/高電力試験用グラスウール・セラミック吸収体 |
| レーダー/防衛 (ステルス) |
機体表面で電波を吸収・散散しRCS低減 | X帯~Ku帯中心(案件により数100 MHz~数10 GHz) | 超軽量、構造一体化、耐温度・耐湿・耐振 | 構造一体型RAM(RAS)、多層誘電シート、吸収塗料 |
| 医療機器 | MRI室:外部RFノイズ遮断(遮蔽)/植込み機器:生体適合性確保とEMC対策 | RF帯(64 MHz 等)~数 GHz | MRI室:高シールド性能 / 植込み機器:生体適合性(ISO 10993)、滅菌耐性 | MRI室:RFシールド(銅・鋼板パネル)/植込み機器:チタン筐体/補助:カーボン含浸フォーム |
| 自動車 ADASミリ波 | 76–81 GHzレーダーのゴースト・クラッター低減 | 76–81 GHz | 広温度範囲 -40 ~ +125 °C、耐湿・耐振 | 射出成形熱可塑性吸収体、シリコーン系誘電シート |
| 5G/Beyond 5G (6G) | アンテナ間干渉防止・信号漏洩抑制、建材一体化 | 24–40 GHz(5G)→ 0.1 THz級(6G) | 透明性(可視光透過)、超薄型 | 透明多層膜吸収体(ITO膜など)、メタマテリアル吸収体 |
| 建築・インフラ遮蔽 | TVゴースト障害・ETC通信エラー防止 | VHF/UHF~5 GHz程度 | 耐候・長寿命(10年以上)、意匠性 | フェライトタイル、耐候性ゴムシート、吸収機能付き建材 |

スマートフォンやPCなどの電子機器内部では、高速で動作するICやフレキシブル基板から発生する高周波ノイズが他の回路に干渉したり、不要な電波として外部に放射されたりします。このノイズを抑制するために電波吸収体が用いられます。
対策部品には薄さや柔軟性に加え、能動部品に直接貼り付けられることもあるため、短絡を防ぐための電気的非導電性も重要な特性となります。
柔軟な樹脂に磁性粒子を高密度に充填したシートです。ノイズ源から発生する強力な近傍磁界を捉え、熱エネルギーに変換・吸収することで、不要輻射や回路間の干渉(クロストーク)、筐体内での共振を効果的に抑制します。

電波暗室とは、外部からの電波を遮断し、内部での反射を極限まで抑えるために、壁、天井、床に電波吸収体を設置した特殊な部屋のことです。
自動車部品のEMC試験や軍事規格など、非常に広い周波数範囲(例:30MHz~40GHz以上)に対応する必要があります。内部での不要な反射を抑制し、無線機器の性能評価やノイズ試験の信頼性を確保することが目的です。高出力の電波を照射する試験では、耐熱性や不燃性も求められます。
低周波用の「焼結フェライトタイル」と高周波用の「カーボン含浸ポリウレタン製ピラミッド型吸収体」を組み合わせたハイブリッドシステムが標準的です。人が歩行する床面には先端を切り落とした硬質ブロック型、高出力試験にはグラスウールやセラミックなど不燃性の吸収体が選択されます。

航空機や艦船などが敵のレーダーに探知されにくくするステルス技術の根幹をなす要素です。機体表面でレーダー波を吸収・散乱させ、レーダー断面積(RCS)を低減します。
材料には、極めて高い軽量性、耐久性に加え、温度、湿度、振動といった厳しい環境への耐性が求められます。機体の構造部材と一体化させ、重量を増やすことなくレーダー反射を抑える技術が主流です。
炭素繊維(CFRP)などの構造部材自体に吸収機能を持たせた構造一体型RAM(RAS)が最も先進的です。その他、シート状や塗料として機体表面に適用する多層誘電吸収体や、複雑な形状の部位に補完的に使用される吸収塗料などがあります。

MRI室のように外部電磁波から診断装置を保護したり、ペースメーカーなどの植込み型機器を誤作動から守ったりするために、電磁シールド技術が中心的に用いられ、電波吸収体はそれを補助する目的で利用されます。
特に、体内に埋め込んだり皮膚に直接触れたりする機器では、患者の安全のため、材料の生体適合性(ISO 10993準拠)や滅菌処理への耐性が絶対条件となります。
MRI室では、部屋全体を銅製パネルなどで覆う「RFシールド」が外部電波を遮断する主対策です。その上で、室内の不要な反射を抑え画質を向上させるため、補助的にカーボン含浸フォームなどの吸収体が設置されます。
植込み型機器は、生体適合性の高いチタン製筐体などによる「シールド」で保護するのが基本です。

先進運転支援システム(ADAS)で用いられるミリ波レーダーで、ガードレールや他車両からの不要な反射波によって生じる偽の物体像(ゴースト)やクラッターを抑制するために不可欠です。
76~81GHzの特定のミリ波帯で高い吸収性能を発揮し、バンパー内部やレーダー周辺に設置されます。車載用途ならではの広い温度範囲(-40℃~+125℃)での動作や、耐湿性、耐振性といった高い耐久性が求められます。
耐熱性プラスチック(PA, PBT等)を用いた射出成形品は、複雑な形状の部品を低コストで量産できます。また、薄く柔軟なシリコーンシートは、レーダー基板上の素子間の干渉を抑制するために使われます。

5G通信で利用されるミリ波帯において、アンテナ間の干渉や信号の漏洩を防ぎ、通信品質を確保するために電波吸収体が用いられます。基地局や端末内部に設置されます。
スマートファクトリーやオフィスビルでは、建材と一体化するニーズから、電波を吸収しつつ可視光を透過させる「透明性」という新たな機能が求められています。将来的には、6Gで利用されるテラヘルツ(THz)帯への対応も進められています。
透明なフィルム基板上にITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電膜を形成した吸収体は、窓ガラスなどに適用できます。また、人工的な微細構造で特定の周波数のみを選択的に吸収できるメタマテリアル吸収体は、超薄型化が可能です。

高層ビルによるテレビ電波の反射(ゴースト障害)対策や、ETCゲートでの不要な電波反射による通信エラー防止など、社会インフラの安定稼働を支えるために活用されています。
屋外での使用が前提となるため、10年以上にわたる長期耐久性や耐候性が絶対条件となり、建物の外壁などに使用される場合は、景観と調和する意匠性も考慮されます。
建物の壁面に設置するフェライトタイルはテレビゴースト対策の標準的な手法です。ETCゲートの金属構造物には磁性フィラーを配合した耐候性ゴムシートが取り付けられます。その他、吸収体を組み込んだコンクリートパネルなどの建材も開発されています。
なおこのサイトでは、おすすめの電波吸収体メーカーを用途別に紹介しています。特徴や製品例なども掲載しているので、電波吸収体を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
引用元:E&Cエンジニアリング公式HP https://ece.co.jp/
6G領域の通信端末の評価や、軍事産業でも使える難燃性製品など、新たな製品規格の研究開発に精通。
屋外や真空環境での使用など、特殊な用途での電波吸収体の試作や制作についても相談できます。
また、電波暗室の建設についてもノウハウも豊富です。
引用元:新日本電波吸収体公式HP https://mwa.co.jp/
電磁波環境トータルソリューションカンパニーとして、暗室用の電波吸収体のほか、磁性シート、電磁波ノイズ抑制シート、シールド材の取り扱いも豊富です。
磁性シートは、高い磁気シールド効果 (µ'=50)を維持しつつ、磁束の減衰を極力無くす構造を実現しています。
引用元:TDK公式HP https://www.tdk.com/ja/index.html
EMC試験に関する高い専門性とノウハウから、適切な製品選びや試験環境構築の相談ができます。
電波暗室業界のパイオニア的存在として豊富な施工実績を誇り、先進的な技術を取り入れたEMC試験所も開設。
2024/3/28時点「電波吸収体 メーカー」で調べた際、最終ページまでの検索結果上の公式HPで電波吸収体の取り扱いを確認できたメーカー13社13社を調査。そのうち、用途別
に複数シリーズの電波吸収体を製造・販売している企業6社から以下の条件により3社を選定。
・E&Cエンジニアリング:6G帯にも対応できる電波吸収体の自社製造を行っている
・新日本電波吸収体:電磁波ノイズ抑制製品について最も多くのラインナップがある
・TDK:国際基準を満たしたEMC試験所を開設し、車載機器のEMC測定の試験所認定を取得している