電波暗箱とシールドボックスはいずれも、外部からの電波を遮断し、内部の電波を漏らさない、箱状の設備です。電波を遮断できる、金属などの導電材料で覆われています。電子機器の性能試験やEMC関連試験のほか、生体研究、医療検査などの幅広い用途で使用されます。
電波暗室とシールドボックスの違いは、電波を吸収するように作られた電波吸収体が内部に貼られているか、いないかです。電波吸収体が貼られたものが電波暗箱、貼られていないものがシールドボックスとなります。
電波吸収体が貼られた電波暗箱の内部では、外部からの電波は遮断され、内部で発生する電波の反射もほとんどないため、周囲に物体が何もない空間を模擬することが可能です。電子機器の性能試験やEMC関連試験では多くの場合、シールドボックスではなく電波暗箱を使用する必要があります。
電波暗室・シールドルームと、電波暗箱・シールドボックスが違う点は、その大きさです。電波暗室・シールドルームは数メートルの大きさとなる大型の設備ですが、電波暗箱・シールドボックスはそれと比べてはるかに小型です。電波暗箱は、おもにミリ波などの高周波数帯の試験で使用されます。
電波暗室・シールドルームと、電波暗箱・シールドボックスを比較したときのメリットは、まず小型なため省スペースでの設置が可能なことです。室内やデスクの上などに設置できるため、オフィスのレイアウト変更などにも問題なく対応できます。また、価格も安価で、設置工事が不要なこともメリットといえるでしょう。
電波暗箱・シールドボックスが電波を遮断できるのは、ファラデーケージの原理を利用しているからです。ファラデーケージとは1836年にイギリスの化学者・物理学者マイケル・ファラデーが発明したもので、金属などの導体でできた器やかごのことです。
ファラデーケージの内部に外部からの電波が入ってくると、導体内部の正電荷・負電荷が、電波を打ち消すように移動します。それにより、内部には電波が存在しないのと同じ状態になるのです。金属でできた自動車や電車、エレベーターなどの中で、携帯端末やラジオの電波が届きにくくなるのは、ファラデーケージの原理の1つの例です。
電波暗箱の内部に貼られる電波吸収体は、誘電損失タイプと磁性損失タイプの、大きく分けて2種類あります。誘電損失タイプの電波吸収体は、カーボンやグラファイトなどの物質を電波が通過する際、電気抵抗や誘電損失により、電波が熱に変換される原理を利用したものです。磁性損失タイプの電波吸収体は、フェライトなどの物質を電波が通過する際に、電波が磁気共鳴に変換される原理を利用しています。
電波暗箱・シールドボックスの外部を覆う金属の構造体は、厚ければ厚いほどシールド性能が高まります。それとともに、扉などの開口部にもしっかりとしたシールド対策を施すことが必要です。
金属の材料は、電波を構成する電界と磁界のうち、おもに電界を遮断したい場合には、導電性の高い銅やアルミニウムなどを選ぶ必要があります。一方、磁界を遮断したい場合には、透磁率が高い鉄などが適当です。
電波暗箱の内部には、6面すべてに電波吸収体を貼り付けます。電波吸収体は前述のとおり、ウレタンや発泡スチロールにカーボン粒子を含浸させた誘電損失タイプのものか、フェライトなどの磁性損失タイプのものかの2種類です。誘電損失タイプは主に高周波(GHz帯以上)に対する効果が高く、一方磁性損失タイプは低周波(MHz帯以下)に対して効果を発揮します。
誘電損失タイプの電波吸収体にはピラミッド型のものもあります。ピラミッド型にすることで、吸収させたい電波の周波数帯の広帯域化が可能です。
電波に関する先端技術開発に携わる企業を全面的にサポートする、マイクロウェーブ ファクトリー株式会社。同社の電波暗箱測定システムは、小型のアンテナ放射パターンやアンテナゲインの測定に適しており、また小型無線機器のアンテナ効率、実効放射電力なども測定できます。さらに、オプションを追加すれば、全球面輻射電力自動計測(3D)も可能です。
電波暗室・シールドルームやオープンサイトシステムなどの設計・施工を行う、日本シールドエンクロージャー。同社の電波暗箱は、小型のものは卓上での使用も可能です。アンテナの指向性やパターン測定、実効放射電力測定に対応しています。
各種計測システムやシールドボックスなどの設計・製造・販売を行うプロテック。同社の電波暗箱は、各種通信機器の検査のために、生産から品質管理・販売まで幅広く使用できます。ボックスの軽量化により持ち運びしやすく、また操作性も向上しています。
各種測定器や理化学機器などの販売を行うサンシージャパン。同社が販売する電波暗箱は、背面にインターフェイスの拡張が可能です。また遮蔽性能と検査収納物の視認性を両立するシーイルドウィンドウを取り付けることもできます。
電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。
自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。
調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。
電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。
既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。
大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。
EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。
【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能