リバブレーションチャンバーは内壁が金属で覆われたシールドルームと、スターラーと呼ばれる機械式の撹拌(かくはん)機、送信アンテナ、電界プロープなどで構成される測定システムです。
スターラーが送信アンテナから放射された電波を撹拌し、シールドルーム内で多重反射させることで、多方向から電波が到達する均一な電磁場をつくりだせるのが特徴。都市部の電磁波環境に近い状態を再現でき、実環境に近い条件での試験を行えるのがリバブレーションチャンバーの利点です。
リバブレーションチャンバーのシールドルームを構成する壁の素材として理想的なのは、導電率の値が無限の完全導体です。ただ、実際に使用される壁の素材の導電率には限りがあるため、シールドルーム内の電磁波の伝送にはどうしても減衰が伴います。
シールドルームの壁にどの素材を選ぶかは重要なポイントで、主に使用されるのは導電率の値が大きい銅やアルミニウムです。
リバブレーションチャンバーは内装と外装で異なる素材を使用することがあり、内装のシールディングパネル表面を銅で仕上げるのはキャビティ内の電解強度を高めるため。外装のシールディングパネル表面に使われるスチールは費用体効果の高い素材で、必要なRFシールディングパフォーマンスを提供するために用いられます。
そのほか、軍用車両などの重量のある製品を試験する際やリバブレーションチャンバー内外を機器が出入りすることが多い場合、耐久性の観点から内部の床をアルミニウムで仕上げることもあります。
電波暗室が1方向1角度の条件で供試体に電波を直接照射するのに対し、リバブレーションチャンバーはあらゆる方向から供試体に電波を照射して試験を行うという違いがあります。リバブレーションチャンバーは実環境に近い状態で電波に対する耐性の評価試験を行えるため、電波への高い耐性が求められる電子機器の試験により適していると言えるでしょう。
内部が金属で覆われたチャンバー内で電波を送信した際、チャンバー内に共振現象が発生し、低い送信電力で非常に高い電解強度を得られるのがリバブレーションチャンバーの特徴の1つです。
実は私たちの生活に身近な電子レンジも、リバブレーションチャンバーと同じ構造をしています。電子レンジも内部が金属で覆われており、ターンテーブルまたは撹拌機の回転によって食品に電磁波を均一に照射。分子を震えさせることで発生した摩擦熱により、食品を温める構造になっています。
EMC試験で用いられるリバブレーションチャンバーの場合は、金属反射面で全周囲を囲んだ空間に撹拌機を搭載し、内部に設置した送信アンテナからRF信号を出力。チャンバー内の共振と撹拌機を利用することでチャンバー内部のキャビティ境界条件を変化させ、統計的に等方かつ電解的に均一なRFフィールド条件をつくりだせる仕組みになっています。
あらゆる方向から電波を照射できるリバブレーションチャンバーは、ビルなどに衝突して多方向から電磁波が到来する都市部のマルチパス環境を模擬できることから、信頼性の高いEMC試験を実施できるとして注目されています。リバブレーションチャンバーを使ったEMC試験の対象となるのは、自動運転や車載ネットワークシステム、4G・5G通信システムなど。また、航空宇宙や防衛などの業種にもリバブレーションチャンバーが使用されています。
電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。
自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。
調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。
電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。
既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。
大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。
EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。
【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能