近年普及した5G通信においては、電波暗室が改めて注目されています。アンテナと無線送受信モジュールが一体化される5G通信では、性能評価を行なうために電波暗室を使用しなければならないからです。その際の電波暗室は、5G通信に適合するシールドルームや電波吸収体、アンテナ、測定機器などが備えられたものでなくてはなりません。
それでは最初に、そもそも「5G」とは何かを解説します。
5Gとは「5th Generation」の略称で、日本語では「第5世代移動通信システム」と呼ばれ、以下の特長があります。
5Gの通信機器開発における性能評価で、電波暗室の必要性が改めて高まっています。
4G までの通信機器の性能評価は、アンテナと通信モジュールを分けて行なっていました。アンテナの性能評価のみ電波暗室を用いて行ない、通信モジュールの性能評価は計測器をケーブルでつないで行なうことができたのです。
ところが5G通信機器は、使用される周波数帯が高く(3.7GHzと4.5GHz、および28GHz)波長がミリ単位になる(ミリ波)ため、アンテナ素子を小さくでき、アンテナと通信モジュールを一体化した「アンテナインパッケージ(AiP)」が主流になっています。
このAiPの性能評価は、アンテナと通信モジュールを分けられないため、すべてを電波暗室内でのOTA(Over-the-air)で行なうことが不可欠です。
5G のOTAテストを行なうための電波暗室は、ミリ波周波数のテストが可能となる性能を備えていなければなりません。また、通信モジュールのテストも行なえる、より高度な計測機器が必要です。
5Gの通信機器開発で用いる電波暗室は、以下のような性能が満たされなくてはなりません。
電波暗室の躯体であるシールドルームは、外部の電磁波を内部に入れないこと、および内部の電磁波を外部に出さないことが目的です。このシールドルームの性能は、5Gのミリ波に対応したものでなくてはなりません。
電波吸収体は、電波暗室内部で発生した電波を吸収し、電波の拡散を防ぎます。材料であるフェライトの開発技術深化や、ピラミッド型などの形状の工夫により、ミリ波対応が進んでいます。
測定に用いられる電波暗室内のアンテナも、5G通信のミリ波に対応していなければなりません。
5G通信機器の性能評価を行なうためには、ミリ波に対応した計測機器と計測システムが必要です。新しい周波数や、帯域の広い変調波の試験が必要となるため、システムが複雑になるとともに、ビームフォーミングやアレーアンテナなどの高度な技術も必要です。
神奈川県横浜市にパナソニックが建設した、5G通信計測のための電波暗室を紹介します。
この電波暗室は、5G通信搭載が急速に進むと予想される自動運転車やコネクテッドカーの通信性能測定を、車両まるごとで行なうためのものです。21×29×9m(幅×奥行き×高さ)のスペースを備える、電波暗室としては国内最大級のものとなります。(※2019年9月公開時点)
5G通信機器を車両に搭載すると、車体による電波の反射や、搭載される他の電子機器が放出する電磁波ノイズの影響を受け、5G通信機器単体での性能が十分発揮できない可能性があります。そのため、車両まるごとでの通信性能評価を行なう必要があるのです。
電波暗室内にはターンテーブルが設置され、車両を360度回転させるとともに、計測用アンテナを水平方向に移動させることにより、最大200の周波数ポイントを同時に測定します。さらに、アンテナを上下・前後に移動させることにより、2分間に7万2,000ポイントの通信性能評価を行なうことが可能です。
情報参照元:https://car.motor-fan.jp/tech/10011577
2020年3月から、高速・大容量、多数同時接続、高信頼・低遅延が特長の5G通信がサービスを開始しました。この5G通信の登場により、電波暗室の必要性が改めて高まっています。
4Gまでの通信機器は、その性能評価をアンテナと通信モジュールを分けて行なっていました。ところが、使用する電波の波長がミリ単位になる5Gの通信機器は、アンテナと通信モジュールが一体になったものが主流です。そのため、性能評価を電波暗室を用いたOTAで行なうことが不可欠なのです。
5G通信の性能評価を行なうための電波暗室は、シールドルームや電波吸収体、アンテナ、計測機器・システムが、5Gに適合していなくてはなりません。パナソニックは、自動運転車・コネクテッドカーの通信性能をまるごと測定できる、国内最大級の電波暗室を建設しました。
本サイトでは5G通信用だけでなく、事業所のさまざまな状況に合わせた、おすすめの電波暗室メーカーを紹介しています。電波暗室の導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
このサイトでは、電波暗室の他に、電波吸収体の詳細解説や、おすすめのメーカー、知っておきたい基礎知識について紹介しています。電波吸収体メーカーについても製品例とともに用途別に紹介しています。電波吸収体を検討されているかたは、ぜひこちらも参考にしてみてください。
電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。
自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
引用元:マイクロウェーブ ファクトリー公式HP
(https://www.mwf.co.jp/)
電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。
調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。
引用元:TDK公式HP
(https://www.tdk.com/ja/index.html)
電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。
既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。
引用元:テュフラインランドジャパン公式HP
(https://www.tuv.com/japan/jp/)
大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。
EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。
【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能