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電波暗室の違い|3m法と10m法

電波暗室には、アンテナから検査対象となる製品までの測定距離によって、大型のものから小型のものまでいくつかの種類があります。代表的なものは、3m法と10m法の2種類で、EMC試験では10m法電波暗室と3m法電波暗室が利用されています。そこで、ここでは3m法と10m法の電波暗室の違いについて紹介していきます。

3m法とは

アンテナと供試品の距離が3mの電波暗室で、小型機器のEMC試験に適しています。主に測定周波数が1GHzを超えている場合や、一般家庭もしくは軽工業環境で使用される機器の米国の900MHz帯電波を使用する無線デバイスに対する規制(FCC part15クラスB)の測定などに使用されています。

機器から発生する電磁ノイズを計測する放射エミッション測定や、通信ポート伝導妨害波の測定にも対応しています。

10m法とは

アンテナと供試品の距離が10mの電波暗室で、大型機器のEMC試験に適しています。10m法では壁面の電波吸収体が、広帯域で20dB以上の電波吸収特性が必要となっており、10m法の電波暗室には、重量のある機器でもスムーズに測定が行えるように、大型ターンテーブルを設けているものもあります。

一般的には、電磁妨害の測定に関する国際基準となっているCISPR規格、 欧州のEN規格、マルチメディア機器を対象とした日本のVCCI規格などは、10m法の電波暗室で測定します。

電波暗室の電磁エネルギーを効果的に吸収するためには、それぞれの使用条件に応じた電波吸収材を選定することが正確な測定を実施するために重要なポイント。電波暗室の導入やレンタルをする際には、専門知識を持っているメーカーに依頼することが大切です。

10m法と3m法の限度値の違い

電波暗室は10m法と3m法で、EMI試験(放射エミッション試験)の「限度値」が異なります。限度値とは、CISPRやEN、VCCIなどの規格で規定される、許容される放射エミッション強度の最大値のことです。測定結果が限度値を超えると、試験は不合格となります。

10m法と比較して3m法では、限度値はすべての周波数で10dB緩和されます。これは周りに何もない「自由空間」では、電磁波の強度は距離に反比例して減衰し、距離が10mと3mではその差が約10dBになるためです。

ただし、電波暗室内は厳密な自由空間ではありません。電磁波の強度はEUT(供試品)と測定アンテナの距離だけではなく、床面からの反射や測定アンテナの指向性、EUTのサイズなどにも影響されます。そのため、3m法電波暗室で予備測定を行った際には「大丈夫」と判断されたものが、10m法電波暗室での本測定では不合格になることもあります。

3m法と10m法の違いを比較

3m法 10m法
測定距離対象物まで3m 対象物まで10m
EMC試験の
種類
小型機器 大型機器
電波規格FCC part15クラスB
測定周波数が1GHzを超えている場合
CISPR、EN、VCCIなど

自社の状況別
電波暗室メーカ3選

3m法電波暗室・10m法電波暗室を扱っているメーカー

リケン環境システム

リケン環境システムの3m法・10m法電波暗室

リケン環境システムの3m法・10m法電波暗室は、各種規格の測定に対応しています。3m法電波暗室には自動車の搬入が、10m法電波暗室には大型車両の搬入が可能です。ターンテーブルは、3m法は直径2m、10m法は2mと6mのデュアルタイプが設置されています。

リケン環境システムはどのような会社か

株式会社リケン環境システムは1979年(昭和54年)の設立です。本社は埼玉県熊谷市に置き、資本金は1億円、社員は47名(2020年7月1日時点)となっています。EMC製品や電波暗室、電波吸収体、シールドルーム、電磁波測定機器などの製造・販売を行っています。

テクノサイエンスシステムズ

テクノサイエンスシステムズの3m法・10m法電波暗室

テクノサイエンスシステムズの3m法・10m法の電波暗室は、測定規格CISPR16-1-4、IEC61000-4-3などに準拠し、フェライト電波吸収体と電波整合器の整合技術により、広範囲な吸収性能を実現しています。無段差バリアフリー扉の採用により、大型装置の搬出入も容易です。

テクノサイエンスシステムズはどのような会社か

株式会社テクノサイエンスシステムズは2020年8月20日の設立です。本社は神奈川県川崎市高津区に置き、資本金は4,000万円となっています。電波暗室の設計・施工のほか、電波暗室の付帯設備や電波吸収体の製造・販売、電波暗室のメンテナンス、EMP(強力なパルス状の電磁波)対策なども行います。

オリエントマイクロウェーブ

オリエントマイクロウェーブの3m法・10m法電波暗室

オリエントマイクロウェーブでは、3m法と10m法の電波暗室をレンタルで提供しています。ターンテーブルは2軸での回転に対応するため、360度全方位の立体放射パターンを測定できます。ただし、パターン測定に特化しているため、EMCなどの評価規格には対応していません。

オリエントマイクロウェーブはどのような会社か

株式会社オリエントマイクロウェーブは1983年(昭和58年)の設立です。本社は滋賀県東近江市に置き、資本金は4,600万円、社員数は86名(2022年4月時点)となっています。電波暗室レンタルのほか、マイクロ波用同軸コネクタやゲーブルアッセンブリの製造販売などを行っています。

3m法電波暗室・10m法電波暗室を利用できる施設

東京都立産業技術研究センター

東京都立産業技術研究センターの3m法・10m法電波暗室

東京都立産業技術研究センターの3m法・10m法電波暗室は一般利用が可能で、放射・伝導エミッション測定、雑音端子電圧測定、サービスロボット・5G機器のエミッション測定ができます。試験の内容によっては依頼試験も可能です。

東京都立産業技術研究センターはどのような組織か

地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センターは、技術的な支援を行うことで都内中小企業の振興を図り、都民生活の向上に寄与することを目的に、東京都によって設立された公設試験研究機関です。技術支援を行うのとともに、東京都の産業を支援するための研究開発を行っています。

設備利用の料金

TDK

TDKの3m法・10m法電波暗室

TDKのEMC試験サービスは、超高性能10m法電波暗室、車載機器用3m法電波暗室、各種シールドルームを備え、EMC測定・評価サービスを提供しています。国際基準(ISO/IEC17025)に基づく審査を受け、日本VLAC, 米国A2LAの認定を取得した、国際的に認められた試験所です。

TDKはどのような会社か

TDKは磁性技術で世界をリードする、総合電子部品メーカーです。各種シミュレータ用ライブラリやTDKの各種電子部品の効果を確認できるソフトウェアツールの提供、EMC試験サービス、ノイズ対策実習講座などの各種技術支援も積極的に行っています。

設備利用の料金

東急建設

東急建設の3m法・10m法電波暗室

東急建設の3m法電波暗室はCISPRやIEEE STDの国際規格に準拠しており、規格に準拠したEMC測定が可能です。EMC自動測定ソフトウェアによりデータ取得が高速にできます。計測器の操作は原則として東急建設の担当者が行いますが、試験環境のみの貸し出しも受けられます。

東急建設はどのような会社か

東急建設株式会社は1946年創業の、総合建設業を営む会社です。技術のシンクタンクとして技術研究所を有し、さまざまな建設技術の開発を行い、先進技術を導入した建設ソリューションを提供しています。電波暗室は技術研究所の施設の一つで、自社利用だけでなく、一般への貸し出しも行っています。

設備利用の料金

要問合せ

北川工業

北川工業の3m法・10m法電波暗室

北川工業は、直径3mのターンテーブルを備えた10m法電波暗室、直径2mのターンテーブルを備えた3m法電波暗室、車載機器用の電波暗室、EV/HVの電源用の電波暗室の4つの電波暗室を貸し出ししています。そのほかに2つのシールドルームもあり、さまざまな測定を行えます。

北川工業はどのような会社か

北川工業株式会社は昭和38年の創業で、本社は愛知県稲沢市、事業所は国内に5か所、海外に11か所あります。コンピュータやOA機器、AV機器、家電製品、自動車、航空機、建築物などに使用される、電磁波環境コンポーネントや精密エンジニアリングコンポーネントの製造・販売を行っています。

設備利用の料金

電波暗室をレンタルするメリットとは

電波暗室をレンタルするメリットは、まず購入するのと比較して初期費用が安いことが挙げられます。また、継続的に必要となるメンテナンスの費用がかからないことも大きいでしょう。電波暗室のレンタルは、使用頻度が高くなければおすすめです。

ただし、その一方レンタルには、電波暗室まで出向かなければならない、あるいは認証機関への登録確認が必要、などのデメリットもあります。

大学での電波暗室事例を見てみる

電波暗室メーカーの選び方と
オススメ企業3選

電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。

自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。

電波暗室を初めて導入する/
計測システムから
刷新するなら

マイクロウェーブ
ファクトリー株式会社
マイクロウェーブ ファクトリー株式会社公式HP

引用元:マイクロウェーブ ファクトリー公式HP
(https://www.mwf.co.jp/)

電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。

調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。

公式HPで
電波暗室の
特徴を見る

マイクロウェーブ
ファクトリーの
特徴をもっと見る

今ある電波暗室を
増室したいなら

TDK株式会社
TDK株式会社公式HP

引用元:TDK公式HP
(https://www.tdk.com/ja/index.html)

電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。

既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。

公式HPで
電波暗室の
特徴を見る

TDKの
特徴をもっと見る

購入するほどの
費用対効果を
見込めない
なら

テュフラインランド
ジャパン株式会社
テュフラインランドジャパン株式会社公式HP

引用元:テュフラインランドジャパン公式HP
(https://www.tuv.com/japan/jp/)

大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。

EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。

公式HPで
電波暗室の
特徴を見る

テュフライン
ランドジャパンの
特徴をもっと見る

【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能