試験の品質を保証するために、電波暗室の適切な保守・メンテナンスは必要不可欠です。EMC試験の設備が仕様の範囲内で稼働していなければ、正確な試験を行なうことは望めません。また企業のコスト管理のうえでも、保守・メンテナンスは重要な意味を持っています。電波暗室が故障・不具合などで使用できなくなると、修理のためにコストがかかるだけでなく、使用できないことでも損失が発生します。
この修理コストと損失は、機器がハイテク化して高価であるほど高額になります。コスト・損失の発生を防ぐためにも、適切な保守・メンテナンスにより、電波暗室を停止することなく稼働させなければなりません。
シールド扉は、吸収体の劣化により遮蔽性能が低下します。次に、閉じた扉をバネ鋼板で固定するタイプの場合、バネ鋼板の劣化によって生じる扉への負荷増大で、内部機構の劣化が加速されます。空圧式自動ドアの場合には経年劣化でエアー漏れが生じることがあります。
試験設備の電源や信号からノイズを除くためのフィルターは、使用されるコンデンサやコイルなどの部品の経年劣化が生じます。フィルターの推奨交換時期は10年で、それを超えると破損したり、発火事故が起こったりする可能性も。10年以内でのフィルター交換が必要です。フィルターが破損してからの交換は、部品の納品や施工に時間がかかるため、その間電波暗室の使用ができなくなるリスクがあります。
電波暗室内部の照明が白熱電球の場合は、LED化もオススメです。照明のLED化は以下のメリットがあります。
アンテナマスト(測定用アンテナを取り付けるためのポール)やターンテーブルは、動作不具合の予防のため、消耗品の交換やメンテナンスが必要です。
電波暗室内の電波吸収体も経年劣化するため、暗室特性を維持するためには劣化した電波吸収体の交換が必要です。
電波吸収体は、入射した電磁波を100%吸収できることが理想です。しかし実際には、すべての電磁波を吸収するのは困難で、若干の反射が生じます。反射の度合いは、使用する吸収体材料により異なります。
また電磁波の反射の度合いは、電磁波の周波数によっても異なります。電波吸収体をピラミッド形にすることで、広い周波数帯域での反射を抑えられます。
電波吸収体の交換に際しては、吸収性能がより良い新製品が出ていないかを確認する必要があるでしょう。
電波吸収体の吸収性能は、上記の材料と形のほか、サイズと配置によっても変わってきます。吸収体のサイズと配置は、以下の要件により決まります。
保守・メンテナンスの為に電波吸収体を単体で購入することを検討しているなら、各分野に精通している専門性の高い電波吸収体メーカーから選ぶことがおすすめです。一口に電波吸収体といっても、材料・形状などは様々であり、各メーカーの情報を確認することで、求めている電波吸収体に出会える可能性が高くなります。
このサイトでは、用途別に電波吸収体メーカーについて、詳細に解説していますので、ぜひ確認してみてください。他にも、電波吸収体の詳細解説や、メーカー情報、知っておきたい基礎知識について解説しています。電波吸収体に詳しくなれますので、電波吸収体の購入を検討している方は、必見です。
EMC試験ではシールド扉の遮蔽性能、および電波暗室内の電磁波の反射度合いを示すサイトアッテネーション偏差が、規格で定められた値の範囲内に収める必要があります。これらはシールド扉や電波暗室内の設備の経年劣化で変化する可能性があるため、定期的な測定が必要です。
電波暗室では地面からの反射を再現する必要があるため、グランドプレーン(床)の平坦度も規格で定められています。米国規格協会によるANSI C63.7によれば、測定精度を維持するためには、アンテナ間隔が3mの場合には、グランドプレーンに5cmを超える凸凹があってはならないとされています。温度変化による膨張と収縮でグランドプレーンの反りが生じていないか、確認が必要でしょう。
電波暗室は日常的に以下のメンテナンスが必要です。
シールド扉は、使用頻度により3年~5年ごとにメンテナンスが必要です。扉のバネ鋼板は消耗品となるため、少々欠ける程度なら問題はないものの、まとめて欠けた部分が出てきたら交換が必要でしょう。また、バネ鋼板の汚れがひどいと、接触抵抗が高くなり扉の遮蔽性能が落ちるため、やはり交換がオススメです。
ターンテーブルと、アンテナの位置を変化させるアンテナポジショナーに関しても、使用頻度により3年~5年ごとでのメンテナンスが必要です。
電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。
自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。
調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。
電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。
既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。
大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。
EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。
【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能