電波暗室パーフェクトガイド » 電波暗室の基礎知識 » 電波暗室の試験・測定方法

電波暗室の試験・測定方法

外部からの電磁波の影響を受けず、外部にも電磁波を漏らさない電波暗室を使用して、さまざまな試験・測定が行なわれます。電波暗室を使用すれば、周囲からの電磁波の影響を受けることなく、また電磁波を発生させて電波法の制限を受けるなどもなく、測定が行なえます。

この記事では、電波暗室で行なわれる試験・測定を、電子機器から放射される電磁波を測定する放射エミッション試験と、電子機器の電磁波に対する耐性を評価する照射試験のそれぞれについて解説します。

放射エミッション測定とは?

放射エミッション測定とは、電子機器から発生する電磁ノイズを、数m離れたところに設置したアンテナで受信し、その強度を測定するものです。測定方法は、工業・科学・医療用装置向けにはCISPR11、家電製品向けにはCISPR14、電気照明類向けにはCISPR15、マルチメディア機器向けにはCISPR32などが規格として定められています。

測定の際には電波暗室を使用し、周波数が30MHz~1GHzでは半(5面)電波暗室で、1GHz以上では完全(6面)電波暗室で行ないます。

受信アンテナは3mや10mなど、規格で定められた位置に設置します。アンテナと測定対象の電子機器を設置したら、電子機器を0~360度回転させ、アンテナは高さ1m~4mで上下させて、放射される電磁波が強い周波数を測定します。測定結果が規格で定められた許容範囲以内なら合格です。

車載・車両エミッション測定とは?

車載・車両エミッション測定とは、上記の放射エミッション測定を自動車の車両・車載機器に対して行なうものです。規格は2004/104/EC、CISPR 12、CISPR 25のほか、各自動車メーカー独自のものもあります。

車載機器は電子回路・マイコンを搭載したナビゲーションやステレオ、ドライブレコーダーなどのほか、イグニッション、インジェクション、オルタネーター、ワイパーモーター、ヒーター、空調コンプレッサー、ドアロックなど多岐にわたります。

アンテナ照射試験とは?

アンテナ照射試験とは、ラジオやテレビ、携帯電話、トランシーバ、アマチュア無線などの電波に対して、電子機器が影響を受けないかを確認するための試験です。測定する電子機器に電波をアンテナで照射し、誤動作や耐性を評価します。

対応する規格はISO 11452-2、JASO D010、ECE R10、ISO 13766、EN 13309などで、車載機器の場合には各自動車メーカーの規格もあります。車載機器の照射試験を行なう際には、車載試験用の特殊なホーンアンテナを使用します。

TEMセル試験とは?

TEMセルとは「Transverse Electro-Magnetic Cell」の略称で、同軸ケーブルの一部を膨らませた箱状の試験機器です。主に車載電子機器やハーネスが強い電磁波にさらされたときの誤動作や耐性を評価するために使われます。シールドされた構造のため、電波暗室を利用せずにこれだけで試験が行なえます。

試験対象の電子機器は、TEMセルの中央にある隔壁か、底面に置きます。信号発生器とパワーアンプにより、強力な電磁波がTEMセル内部に発生します。

TEMセルは構造上の制約から、使用できる周波数は数百MHz程度が上限です。それ以上のGHz帯域の周波数での試験には、G-TEMセル(Gigahertz TEM cell)が用いられます。

G-TEMセルはくさび形をした箱で、それ自体がアンテナの役割を果たします。アンテナを別に用意しなくてすみ、アンプも小型のもので間に合うため、電波暗室での試験とくらべてより簡便に試験が行なえます。

大学での電波暗室事例を見てみる

ストリップライン法試験とは?

ストリップライン法試験とは、車載電子機器の本体とハーネスに電磁波を照射し、誤動作や耐性を評価するために考案された試験方法です。アンテナ照射試験とくらべ、はるかに小さな電力で強い電磁波を発生します。

2~3m程度の長さの平板状の電極を平行に並べた構造で、電極のあいだに電子機器・ハーネスを置いて試験を実施します。電磁波の周波数は10kHz~1GHzと広範囲をカバーします。ただし、シールドされた構造ではないため、外部への電波漏洩を防ぎ、発生電磁波を安定させるためには電波暗室が必要です。

ISO11452-5、ECER10などの規格に準拠しています。

近接照射イミュニティ試験とは?

近接照射イミュニティ試験とは、近距離から電磁波を照射し、電子機器の電磁波に対する耐性(イミュニティ)を評価する試験です。

近年ではスマートフォンが、生活に欠かせない電子機器として幅広く普及しています。スマートフォンはいうまでもなく、電磁波の発生源の一つです。また、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)により、家電やマルチメディア機器が無線通信によってつながる世界も到来しようとしています。すなわち、これからは無数の電磁波発生源がたがいに近距離に置かれるケースが増えると予想されるわけです。

スマートフォンやIoTが発生する電磁波は、それほど強いものではありません。しかし、電磁波は近づくほど強度が強くなる特性を持っています。そのため、近接した電磁波発生源による電子機器の耐性試験が必要とされるようになり、2017年に近接照射イミュニティ試験の基本規格IEC 61000-4-39が発行されました。

近接照射イミュニティ試験では、低周波はループアンテナ、高周波はTEMホーンアンテナにより電磁波を発生させ、アンテナを電子機器から5~10cmの近距離に置いたときの、電子機器の耐性を測定します。

自社の状況別
電波暗室メーカ3選

電波暗室メーカーの選び方と
オススメ企業3選

電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。

自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。

電波暗室を初めて導入する/
計測システムから
刷新するなら

マイクロウェーブ
ファクトリー株式会社
マイクロウェーブ ファクトリー株式会社公式HP

引用元:マイクロウェーブ ファクトリー公式HP
(https://www.mwf.co.jp/)

電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。

調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。

公式HPで
電波暗室の
特徴を見る

マイクロウェーブ
ファクトリーの
特徴をもっと見る

今ある電波暗室を
増室したいなら

TDK株式会社
TDK株式会社公式HP

引用元:TDK公式HP
(https://www.tdk.com/ja/index.html)

電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。

既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。

公式HPで
電波暗室の
特徴を見る

TDKの
特徴をもっと見る

購入するほどの
費用対効果を
見込めない
なら

テュフラインランド
ジャパン株式会社
テュフラインランドジャパン株式会社公式HP

引用元:テュフラインランドジャパン公式HP
(https://www.tuv.com/japan/jp/)

大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。

EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。

公式HPで
電波暗室の
特徴を見る

テュフライン
ランドジャパンの
特徴をもっと見る

【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能