製品開発におけるEMI/EMC(電磁波障害/電磁適合性)のテストは、最終的な市場投入に欠かせないプロセスです。EMC規格に準拠していない製品は、電磁波の影響で他の機器に干渉を引き起こす可能性があり、市場での販売が制限されます。ここでは、製品開発の段階で行う「プリコンプライアンステスト」について詳しく解説します。
最終的なEMC試験に進む前に、製品が規格に適合しているかを確認するために行われるのが「プリコンプライアンステスト」です。テストは、EMI(電磁波障害)やEMS(電磁感受性)に対する適合性を評価するもので、正式な試験に比べて低コストかつ柔軟に実施できるというメリットがあります。
EMC試験に不合格となる製品は、なんと約50%。開発の最終段階で”不合格”となる前に、プリコンプライアンステストを実施することでそのリスクを減らすことができます。早期に問題を発見することで、設計変更や製品改良を行い、最終的なコンプライアンステストに合格する可能性を高めましょう。
プリコンプライアンステストでは、製品が放射する電磁波や伝導によるエミッションを測定します。基本的なセットアップは、スペクトラムアナライザや電波暗室、擬似回路網などを使用。これにより、電磁波の放射量を精度高く測定し、問題箇所を特定できます。
テストは、専用ソフトウェアを用いて自動化されることが多く、使いやすいインターフェースや簡単なウィザード形式で設定が行えます。
製品がどれほどの電磁波を外部に放射しているかを測定します。放射性エミッションテストは、製品が近くの電子機器に影響を与えないように設計されているかどうかを確認するための重要なステップです。
アンテナやスペクトラムアナライザを使って、製品から放射される電磁波の強度や周波数を確認します。オープンエア・テストサイト(OATS)や、シールドされた環境でテストを実施することが推奨されますが、適切な測定環境がない場合は、屋外や電磁ノイズが少ない場所でテストを行うことも可能です。
伝導エミッションテストでは、製品の電源ケーブルなどを通して伝導される電磁波を測定します。ケーブルや配線を通じて他の機器に干渉が発生することを防ぐため、適切なフィルタリングやシールド処置が必要です。
テストには、LISN(ライン・インピーダンス・安定化回路)や電流プローブを使用し、製品から発生する電磁波が規定の範囲内に収まっているかを確認します。
プリコンプライアンステストを導入することで、EMCテストにおける初回不合格のリスクを減らし、設計段階での修正を最小限に抑えられます。製品の市場投入が遅れることを防ぎ、開発コストを大幅に削減することが可能です。
プリコンプライアンステストは、規格に準拠した厳密なテスト環境を必要としないため、柔軟に実施できます。電波暗室がない場合でも、比較的簡単にテストを行うことが可能です。GTEMセル(Gigahertz Transverse Electromagnetic Cell)などの低コストな代替テスト環境も活用できます。
EMCの問題が発生する前に早期にトラブルシューティングを行うことで、設計段階での改良がスムーズに進みます。最終的な製品の信頼性向上につながり、最小限の修正で規格適合が実現するでしょう。
プリコンプライアンステストでは、製品がCISPR、FCC、MIL-STDなどの国際規格に準拠しているかを確認します。テクトロニクスや他のメーカーのソフトウェアは、これらの規格に準拠したテストを行うための機能を提供しており、特定の規格に合わせて柔軟に設定が可能です。
マーケット | 機器の種類 | 代表的な規格 |
---|---|---|
産業・科学・医療機器 | ISM機器 | CISPR 11, EN 55011, CFR Title 47 Part 18 |
自動車 | 車載コンポーネント | CISPR 25, EN 55025 |
マルチメディア機器 | AV・マルチメディア | CISPR 13, EN 55013, CFR Title 47 Part 15 |
情報技術機器 | IT・通信機器 | CISPR 22, EN 55032 |
EMC問題が発生した場合、プリコンプライアンステストを活用したトラブルシューティングは非常に効果的です。リアルタイム・スペクトラム・アナライザなどを使用し、干渉源を迅速に特定し、問題のある部分を修正します。
プリコンプライアンステストは、製品開発においてコストや時間の節約に直結する重要なプロセスです。早期に問題を発見し、修正することで、最終的なコンプライアンステストに合格する可能性が高まり、市場投入をスムーズに進めることができます。柔軟なテスト環境と適切なツールを使用することで、製品の信頼性と品質を確保し、成功に導きましょう。
電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。
自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
引用元:マイクロウェーブ ファクトリー公式HP
(https://www.mwf.co.jp/)
電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。
調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。
引用元:TDK公式HP
(https://www.tdk.com/ja/index.html)
電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。
既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。
引用元:テュフラインランドジャパン公式HP
(https://www.tuv.com/japan/jp/)
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【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能