電波暗室とシールドルームは、両方とも外部からの電磁波の侵入を遮断し、室内で発生した電磁波が室外に漏洩されるのを防ぐ役割がありますが、それぞれどのような違いがあるのかまとめてみました。
シールドルームは、電磁波の外部からの侵入と内部からの漏洩を低減・遮断するため、金属製の板や金網、導電性材料などで開閉ドア・空調・電源など細部に渡りシールド処理を施した空間のこと。
電波やX線、磁気、静電など、シールドする対象により特性や遮蔽原理が異なり、電磁波がどの程度減衰したかを相対的に表すシールド性能によって、シールドレベルが分けられているものもあります。
電気製品のEMC試験を行う測定用途の他にも、電子機器の研究開発、医療関係、精密検査室、情報漏洩防護室、高セキュリティ室など医療機器や情報漏洩対策などの特別な部屋で使用されています。
電波暗室は、シールドルームの内側に電波吸収体を設置し、外部からの電磁波の侵入と室内の電磁波の乱反射を抑えられる設備のこと。シールドルームの内部に電波吸収体を貼り付けているため、シールドルームでは防ぐことができない電磁波の反射も抑えられる構造になっています。
一般用途の他に、マイクロ波電波暗室や、アンテナ評価用電波暗室、車載機器用電波暗室などの種類があります。無線機器やアンテナの実験、電子機器のノイズ試験などに用いられています。
このサイトでは、電波暗室を導入しようとする企業に向けて、製品の選び方やおすすめのメーカーを紹介します。
電波暗室の導入を考えている場合は、是非参考にしてください。
電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。
自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。
調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。
電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。
既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。
大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。
EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。
【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能
5面電波暗室は、四方の壁と天井の5面に、電磁波の反射を防止する電波吸収体を取り付けた電波暗室です。周囲に障害物がない、屋外の開けた場所「オープンサイト」(後述いたします)を模倣しています。
大地からの反射を想定しているため、床面には電波吸収体が設置されません。地上や机上に置く、あるいは近い場所で使用する機器の測定に使用されます。
6面電波暗室は、床を含む室内の6面すべてに電波吸収体を設置した電波暗室です。周囲に一切の障害物がない宇宙空間を模倣しています。大地からの反射を考慮する必要がない、飛行機や人工衛星、携帯電話などの機器の測定に使用されます。
電波暗室の実際の運用にあたっては、5面電波暗室と6面電波暗室の両方を用意するのでなく、5面電波暗室のみを用意するのが一般的です。
6面電波暗室が必要な測定の際には、5面電波暗室の床に電波吸収体を設置します。
電波吸収体とは、電磁波のエネルギーを熱に変換することで吸収する材料のことです。
電波吸収体の種類は大きく分けて、ウレタンタイプとフェライトタイプの2種類です。ここではウレタンタイプとフェライトタイプの概要と、電波吸収体の原理を解説します。
ウレタンタイプの電波吸収体は、ウレタンなどの樹脂にカーボンやグラファイトなどの導電体を混ぜ込んで作ります。電波吸収体が実用化された1940年代に盛んに研究開発されました。
主に高い周波数(数MHz~110GHz)の電波を吸収するために用いられます。
フェライトタイプの電波吸収体は、酸化鉄の粉末にマンガンや亜鉛、ニッケルなどを添加物として加え、タイル状に成形して高温で焼き固めたものです。1960年代後半に東京工業大学 末武国弘教授、内藤喜之教授、清水康敬教授によって研究開発されました。
主に低い周波数(数百kHz~1GHz)の電磁波を吸収するために用いられます。
ウレタンタイプの電波吸収体はピラミッド型に成形することにより、電磁波をより効率的に吸収します。ピラミッドの山の高さは吸収させようとする電磁波の周波数で決まり、周波数が低いほど山の高さが高くなります。
しかし電波暗室で必要とされる電波吸収性能を満たすためには、山の高さは5m以上にもなり、これでは電波暗室の建築容積は巨大になってしまいます。
その点、新たに開発されたフェライトタイプは、厚さ5~6mm程度で低い周波数の電磁波も吸収が可能です。そのため、現在ではフェライトタイプが電波吸収体として主に用いられることとなっています。
さらに近年では高周波特性に優れるウレタンタイプと、低周波特性に優れるフェライトタイプを重ね合わせ、両タイプの特長を活かした複合型電波吸収体も実用化されています。
10m法電波暗室で使用される電波吸収体は、この複合型電波吸収体が主流です。
電波吸収体は前述のとおり、電磁波のエネルギーを熱に変換することで吸収します。電磁波は電気と磁気が、大きさと向きを周期的に変えながら空間を伝わるものです。ウレタンタイプの電波吸収体は電磁波の電気成分と、フェライトタイプは磁気成分と主に相互作用します。
ウレタンタイプの電波吸収体は、電磁波の電気成分が吸収体に含まれるカーボンやグラファイトなどの電子の移動を引き起こし、移動による電気抵抗や分極で電磁波のエネルギーが吸収されます。
ウレタンとカーボンの混合割合を変えることで、吸収する電磁波の周波数の変更が可能です。
フェライトタイプの電波吸収体は、多数の極小の磁石が並んだような構造になっています。電磁波が入ってくると、電磁波の磁気成分と電波吸収体の極小の磁石が共鳴し、磁石は回転を始めます。
電磁波のエネルギーは、この回転する磁石の運動エネルギーとして吸収されます。磁石の共鳴周波数を変えることで、吸収させたい電磁波の周波数を変更可能です。
電波暗室、シールドルーム以外に簡易的な電波無響環境を作る方法としては、電波吸収体をバラで購入して自作する方法があります。電波吸収体には、様々な材料・形状などがあり、作りたい環境に合わせて選ぶことが可能です。簡易な電波無響環境で試したうえで、電波暗室やシールドルームを設置する方法もあります。
なおこのサイトでは、電波吸収体についての情報をまとめて紹介しています。電波吸収体の詳細解説や、メーカー情報、知っておきたい基礎知識について解説していますので、購入を検討している方は参考になるでしょう。また、用途別におすすめの電波吸収体メーカーについても製品例とともに紹介しています。電波吸収体をバラで購入したい方は、ぜひ確認してみてください。
電波暗室 | シールドルーム | |
---|---|---|
構造 | 外部からの電磁波の侵入と室内の電磁波の乱反射を抑えた空間 | 外来ノイズの影響を遮断するための空間 |
EMC試験の 種類 |
多様なEMC試験を実施することが可能 | 伝導性ノイズのEMC試験に対応 |
使用用途 | 無線機器やアンテナの実験、電子機器のノイズ試験・測定などに使用 | 医療機器や情報漏洩対策などの特別な部屋に使用 |
シールドルームは上で見たとおり、外部からの電磁波の侵入は遮断しますが、内部には電波吸収体が設置されていません。そのため、計測対象機器から出た電波はシールドルーム内で乱反射を起こします。受信アンテナは、本来計測したい直接波以外に乱反射した電波も受信するため、正確な測定ができません。
電波暗室には内部の壁や天井に、電波吸収体が設置されています。そのため、不要な乱反射が抑えられ、直接波のみの計測が可能です。
オープンサイトとは、電波暗室と同様の、EMC計測などのために使用する測定設備です。屋外の広い場所に設けるため、一般に測定距離30mでの正確な計測が可能となっています。
テレビ・地上波デジタル放送の電波や、民家・工場・鉄道・自動車などによるノイズ電磁波など、外来の電磁波が少ない、山奥などの場所に作られます。外来電磁波を遮断する必要がないため、シールドルームは設置されず、測定設備は屋外に設けられます。
シールドルームや電波吸収体の特性による影響を受けないため、より正確なEMC計測が可能となります。また、実験設備を広く取ることができるため、電波暗室では困難な大型の自動車・設備の計測も可能です。一般に地価の安い場所に建設され、大きな建物の建設も不要なため、電波暗室にくらべて計測費用が安価になります。
設備としては、回転台や測定用アンテナ、金属大地面、測定室などが設けられます。基準発振器と基準アンテナでサイトの電波減衰特性(サイト・アッテネーション)を測定し、実際の測定値の補正を行います。
電波暗室を導入するにあたって最初に考えるべきなのは、購入にするかレンタルにするかということ。電波暗室の施工には5,000万~10億円という規模の予算が必要となります。購入となった場合は、計測システムを持っているかどうかで選ぶべき企業が変わってくる点にも注意が必要です。
自社の状況別に3つの企業を紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
電波暗室だけではなく、電波暗室に必須の"計測システム"もまとめて提供してくれる会社。
調整やコミュニケーションの手間が減少し、導入期間の短縮が期待できます。
電波暗室だけを増設したい会社におすすめ。
既存のメーカーの製品保守やメンテナンスにも対応をしており、施工実績も豊富なメーカー(※)です。
大規模な生産をしない場合や、予算確保が困難な場合はレンタルがおすすめ。
EMC試験だけでなく、アンテナ計測など多種多様な試験を行える体制を整えております。
【選定条件】Google検索「電波暗室」で表示された上位22社を調査(2022年3月11日時点)。それぞれ以下の条件で選定。
・電波暗室を初めて導入するなら:唯一、グループ会社内で電波暗室と計測システムの両方を提供している企業
・今ある電波暗室を増室したいなら:既存の電波暗室の補修やメンテナンスに対応しており、なおかつ公式HPに掲載されている電波暗室の施工実績数が一番多い企業(累計1,200基)(2022年3月調査時点)
・購入するほどの費用帯効果を見込めないなら:電波暗室のレンタルを行っている企業の中で、唯一アンテナ計測、EMCの両方のレンタルが可能